LOG ep.3:「上機嫌」という名の、一生続くトレーニング。

前回の記事では、僕の思考の土台となっているアドラー心理学について触れました。 今回は、特定の「この一冊」という紹介ではありませんが、最近僕が貪るように読み、そして実生活で泥臭く実践している「ある分野」についてお話ししたいと思います。

その分野とは、「機嫌」の整え方です。

もっと平たい言葉を使えば、どうすれば「機嫌よく、ポジティブにいられるか」という、古くて新しい問いへの挑戦状。 今の僕を知る人は、もしかすると「ソウスケさんはいつも穏やかですね」と言ってくれるかもしれません。でも、本来の僕は、そんな綺麗な人間ではありませんでした。

かつての僕は、一言で言えば「人に厳しく、自分に甘い」男だったのです。

「恥」から始まった、僕の自己改革

「あんたは本当に、人に厳しくて自分に甘いね」 子供の頃から、母親に何度も言われてきた言葉です。 当時は「うるさいな」と聞き流していましたが、大人になってからもその性質は僕の影のように付きまとっていました。

友人関係でも、職場でも、あるいは大切なパートナーとの関係でも。 自分の心の余裕がなくなると、すぐにその「心の狭さ」が言葉や態度に漏れ出してしまう。相手の小さなミスを許せず、自分の不甲斐なさは棚に上げる。そんな、今思い返すと顔から火が出るほど恥ずかしいコミュニケーションを、僕はあちこちで撒き散らしていました。

特に、酒の席などでついつい盛り上がってしまう「誰かの悪口」。 その場では一瞬の連帯感が生まれたような気がしますが、翌朝残るのは、二日酔いよりも重い自己嫌悪だけです。 「なんてダサいことをしてしまったんだろう」と。

でも、ただ恥じて、小さくなっているだけでは人は変われません。 道具をメンテナンスするように、自分の内面もまた、具体的なアクションを起こさない限り、経年劣化で汚れていくだけなのです。

「かっこいい大人」の定義が書き換わった日

僕が変わる大きなきっかけとなったのは、ある友人の存在でした。 彼はいわゆる「デキる男」でしたが、それ以上に、とにかく「人を否定しない」男でした。

誰に対してもまず肯定から入り、良いところを見つけてはサラッと褒める。 嫌なことがあっても、それを笑いに変えるか、あるいは静かに受け流す。彼と一緒にいて、嫌な気持ちになったことが一度もなかったのです。

「ああ、これが本当の『かっこいい大人』なんだ」 素直にそう思いました。 それと同時に、彼を前にして誰かの悪口で盛り上がろうとしていた自分が、とてつもなく矮小に見えました。

「悪口で繋がる関係」は、脆くて寂しい。 「機嫌の良さで繋がる関係」は、強くて温かい。 その違いを目の当たりにした僕は、まずは「人を褒める」「良いところを探す癖をつける」というトレーニングを自分に課しました。

そして、その指針を補強するために、機嫌やポジティブ心理学に関する本を何冊も読み漁ったのです。

「上機嫌」は、最強の生存戦略である

本を読み込み、実践を繰り返す中で、僕の中にひとつの確信が生まれました。 それは、「機嫌が良ければ、それだけで人生の9割は成功している」という、極論に近い結論です。

機嫌が良いとき、世界はキラキラして見えます。 少しくらい電車が遅れても「あ、もう一曲聴ける時間ができた」と思える。 仕事でミスを指摘されても「成長の種をもらった」と解釈できる。 綺麗事に聞こえるかもしれませんが、これは紛れもない事実です。

逆に、不機嫌なフィルターを通して世界を見ると、すべてが敵に見えてきます。 他人の何気ない一言に棘を感じ、自分ばかりが損をしているような被害妄想に囚われる。不機嫌は、自分のエネルギーを奪うだけでなく、周りの人の「ロマン」さえも破壊してしまう猛毒です。

だからこそ、僕は「機嫌よくいること」を、才能や性格ではなく「トレーニング」だと捉えることにしました。 筋トレで筋肉を育てるように、心の機嫌もまた、訓練によって鍛え上げることができるのです。

「ついてるぞ」という魔法の処理能力

僕がこのトレーニングの中で最も大切にしている、具体的なメソッドがあります。 それは、嫌なことが起きた瞬間に、心の中で(あるいは小さく声に出して)**「ついてるぞ」**とつぶやくことです。

一見すると、単なるポジティブ・シンキングの押し売りに見えるかもしれません。 例えば、道で派手に転んでしまったとき。普通なら「痛い、最悪だ、服も汚れた」と不機嫌になります。 でも、そこで無理やりにでも「ついてるぞ」と処理してみるのです。

「今日が大事な商談の日じゃなくてよかった。ついてるぞ」 「怪我をして歩けなくなる前に、自分の不注意に気づけてよかった。ついてるぞ」

無理があると思われるかもしれません。確かに、最初は無理やりです。 でも、脳というのは面白いもので、言葉を先に発すると、後からその理由を必死で探し始めます。 「ついてる理由」を探し始めた瞬間、脳の焦点は「起きてしまった不幸」から「今ある幸運」へと切り替わります。

これを何度も何度も、何百回も繰り返しました。 すると、どうなったか。 本当に、イライラすることがほとんどなくなったのです。

もちろん、今でも完璧とは言えません。 あまりに理不尽なことが起きれば、心が一瞬、黒く濁ることもあります。 でも、その濁りを「上機嫌のフィルター」で濾過するスピードが、以前とは比べものにならないほど速くなりました。

「悪口」というダサい自分との決別

僕がこのトレーニングのゴールとして設定しているのは、「生涯、他人の悪口を言わない人間になる」ということです。

思い返せば、僕は人の悪口を言うことで、自分の位置を確認しようとしていたのかもしれません。誰かを下げることで、相対的に自分が上がったような錯覚を味わっていた。 でも、それは本当にかっこ悪い、ダサい行為でした。

道具の美しさを語り、ロマンを追求するこのブログの主宰者が、影で誰かを貶めている。 そんな矛盾ほど、僕が愛する「美しいロマン」を汚すものはありません。

人を否定せず、上機嫌で、ポジティブに人とコミュニケーションをとる。 それは、僕にとって最高の「身だしなみ」であり、一生をかけてメンテナンスし続けるべき、最も大切な「ギア」なのだと思っています。

最後に

「ソウスケさんは、どうしてそんなに前向きなんですか?」 いつか誰かにそう聞かれたとき、「毎日、必死でトレーニングしているからですよ」と笑って答えたい。

幸せになりたいなら、まずは上機嫌であること。 幸せだから機嫌が良いのではなく、機嫌が良いから幸せを呼び込める。 その順番を間違えないように、僕は今日も「ついてるぞ」とつぶやきながら、不格好な毎日を歩んでいこうと思います。

もし、今の自分に少し窮屈さを感じている人がいたら。 まずは心の中で、小さくつぶやいてみてください。 「今日という日が、まだ終わっていなくて、ついてるぞ」と。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ソウスケ / 浪漫企画 主宰

動画クリエイター。「ロマンは矛盾だらけ」YouTubeチャンネルにて、ガジェットやレザー、キャンプギアなど、実用性だけでは語れない“こだわり”を追求。

最新デバイスをアナログな鞄に詰め込むような、理屈を超えた「ロマン」の摩擦を愛する。この場所は、僕が選び抜いた道具たちの深い記録です。

コメント

コメントする

目次